奥ゆかしき事は、美しきかな。 その2 |

前回の最後に何を間違えたのか、話しが続くなどと書いてしまった。私は一体何を書こうとしてたのだろうか。あのときは寝ぼけていたのか、酔っていたのか。
いや、非常に高い確率でその両方だったのに違いない。
学生時代のアルバイトは除くとして、私の日本での就労経験の中では、正式な労働契約と言う物を取り交わしたことは一度もない。
したがって職にありついた時点では、一体給料はどう言う体系になっているのか、ボーナスの規程はどうなっているかなど、全くわからなかった。採用前に私が給与について尋ねると、どこの就職先でも「私も正確にはわかりませんが、だいたいこれくらいでしょうかね」などと非常に曖昧模糊とした回答であったことを覚えている。
はっきりと言わないところなど、とても奥ゆかしい。
阿吽の呼吸でめでたく採用となった直後に、数種類のの書類に捺印した。それはどれも健康保険だのと言った実務面での書類ばかりで、労働契約なるものはなかった。
例外は、某市の市立病院に勤務したときのことだ。初日に市役所に行き、市長の前で憲法を守るだの公僕として献身するだのを宣誓した。そしてその直後に「私は市長の前で確かに宣誓をした」と言う事を嘘偽りなく誓う書類に捺印を要求された。
さて所変わってこちらでは、採用に先立って分厚い労働契約書が渡される。
これには仕事の内容、仕事に関わる義務、休暇の規程、給与、ボーナスの計算方法の詳細、など実に様々なことが記載されている。そしてさらには、馘首されることの可能性、退職時の手続き、などあまり読みたくないような事まで明記されているのだ。
場合によってはサインする前に労働契約を扱う弁護士に相談することもある。提示された契約内容に合意ができなければ、採用前に雇用主と交渉して内容の変更を要求することもある。例えば「休暇は年に3週間と書いてあるが、それでは少な過ぎてけしからん。11ヶ月にしろ!」などと要求するのである。
かつて、日本で青色LEDの開発に携わった会社員が、会社に対して発明対価を求める訴訟があった。こちらではそのような裁判は、考えにくい。例えば私の契約書には、職業上で生じた発明、特許に関しては病院が全ての権利を保持する、と明記されている。
したがって私は、世界がビックリ仰天するような数々のアイディアを持っているのであるが、権利を病院に取られないように、それらのアイディアは一切発表せず墓場まで持ち込むことにしたのだ。私としても大変に不本意であるが、皆様は私の世紀の大発明を目にすることは絶対にない。悪しからず。
話は変わる。
日本で知人のお嬢様が、昨今の不景気のあおりを受けて勤め先から雇用の中止を言い渡された。しかし退職金は何も払われなかった。それはおかしいと会社に言うと、正規社員ではないからだ、と言われたそうだ。しかし、本人は正規社員だとばかり思い込んで何年も働いてきたのだ。
これも、おそらく彼女と会社の間には、雇用契約書など存在しなかったのだろうと想像する。
阿吽の呼吸で「働きたいです」「はい、働いてください」と言うのはとても奥ゆかしく美しい事だが、いやはや、やはり私は直球ど真ん中が好きですナ。
付記:
以前にご紹介させていただいた映画「おクジラ様」、全国各地で上映されます。
機会がありましたら、是非どうぞ。
<上映中>
名古屋 : 名演小劇場
大阪 : 第七藝術劇場
<10月14日より>
仙台 : フォーラム仙台
札幌 : ディノスシネマズ札幌劇場
<読了>
「仇敵」 池井戸潤

休暇11か月って、良いですね。笑
日本の面接では給料については”触らぬ神”的だったのを思い出します。
「あなたは”お金の為”にこの会社を選んだのか?
”是非この会社で働きたい!”から選んだのか?」
後者でないと、日本では選ばれないでしょうね。
念入りな労働契約書は直球ど真ん中という事と
USでは簡単に訴えられるのを防ぐバリアってこともあるでしょうね。
日本ももっと弁護士料や裁判がお安く出来れば、違うでしょうに。
surgeron24hrsさんの秘められたアイデアの数々、
日の目を見ることが無いなんて非常に勿体ないです。
NYの地下鉄、ずいぶん綺麗になりましたね。
今月帰省するので「おクジラ様」是非探してみます!

雇用契約に関する事は最初の段階で口頭で終わっているケースが多いですね。給料はだいたいこれぐらいでボーナスは、年二回みたいな...比率は一切聞いた事がなくあとで同僚に「うちはだいたいこれくらいだよ」てな感じ(苦笑)
アメリカのテレビドラマを見ていると家も用意するし年何万ドルで成果次第ではボーナス何十万ドルみたいな(笑)
アメリカドリームなんだなぁってドラマの世界だって思っていましたけど実際にそうなんですねぇ
う〜んどちらが良いのか分かりませんけどアメリカには頑張っただけの事を認めてくれる感じがしますね。
こちらは古い習慣や会社の社風が残っていて古ければ古い程ずっと勤めていてなんの会社に貢献していない輩でも勤続年数が多ければ給与も高いというのが未だありますね。
うちの会社はそんな社風が変わりつつあるのですが...
まだまだですかね(苦汗)
就業規則の書かれた書類、契約書などもそうですけど、実に小さいな文字でごちゃごちゃと記載されていますね。わざと見落としさせようとする悪意を感じるような気もします^_^;
安定した職業、もう昔と同じようにはいきませんね。ずっと働くことが出来る事だけでもありがたいと考えなくては。
昔は、こんなものだと、長い物に巻かれるように、諸先輩からの伝統の如く黙って従事していたことも、最近は、何でもクリアーになって、働き方も多いに変わったようです。
最初からこれこれ何某かの条件をお互いに提示していた方が、後々長くわりきつて働く事も出来るのかもしれません。
単に賃金を得るための従事から、働き甲斐、生き方と暮らしそのものも豊かになったからこその条件の折り合いなのでしょう…。
わたしは古い人間なので、契約云々はまるでダメ…その場の空気や雰囲気で仕事にのめり込んでしまうタイプかも⁈
ですから…振り返れば、今で言うところのブラックな働き方も、仕事の大きな波の中では、楽しみながら参加しちゃったかな…( *´艸`)
その時は大変ではありましたが、今では良い思い出です。
おクジラさま、全国公開よかったです。٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
早目に鑑賞できて、luckyだったかも〜〜(๑˃̵ᴗ˂̵)و
アメリカは本当に細かいところまで契約書に書かれていますよね。主人が新しい仕事につくときはいつも分厚い契約書が郵送されて来ます。中に何が書いてあるのか私には全くわかりませんが(笑)多分会社も自分たちを守るための細かい公約なのかなと思います。
ミュージカルの契約書もたくさんの書類があるんですよ〜。
こちらは報酬が雀の涙ほどなんですけどね。(悲)

でしょ、11ヶ月! もっといいのは一年に休暇は二回だけ、一回に半年、ってのがいいかも。
なるほど、選ばれるためにはお金についてはしのごの言うなと言う感じ、ありそうですね。滅私奉公。でも、日本ならではの良さも沢山ありますよね。
その点、こちらは大違いですね。滅私奉公などと言う言葉は存在しませんが、概念のないところに言葉は存在し得ませんものね。おっしゃるとおり、訴訟を未然に防ぐと言う意味は大きいかもしれません。
NYの地下鉄、落書きがしにくい材質に変えたとどこかで読んだことがあります。昔と比べると本当に綺麗に、そして安全になりました。
映画、おひまが取れるようでしたらどうぞ。帰省、楽しまれてきてください!

日本だと採用時の捺印といえば保険だの年金だのと言った役所関係の書類ばかりだったような記憶があります。その他のことに関しては、おっしゃるように口約束ですね。それで社会が成り立ってしまうと言うのは、そこはやはり日本の優れたところだと思います。
アメリカの富裕層はものすごいお金を得ていますね。きっと彼らの収入よりも少ない国家予算の国なんて沢山あるのでしょうね。
こちらは成果を出すと収入うが上がるといのが非常に一般的です。私が日本の公立病院に勤務していた時は、給料は診療科ちは無関係に大学の卒業年次でl決まっていました。
お! 貴社は社風に変化の兆しですか!いいですね。

契約の書類、こちらでは正式な法書類なので表記もとても読みにくい文章です。日本風に言うと「甲は乙に丙を.....」なんて感じです。あまりに複雑だとやはり弁護士と相談、と言う必要が出てきてしまいます。
こちらは勤務医でも、簡単に馘を切られてしまいます。言い渡された当日に、文句を言ったり暴れたりしないように、ガードマンに付き添われて建物から出されると言うこともしばしばあります。日本も変わりつつあるとはいえ、こちらはやはり厳しいです。

日本、イギリス、アメリカと働いてきましたが、やはりアメリカがダントツで事前の細かい契約を重視しますね。イギリスはある意味日本と似ているところが多くって、結構相手を信頼した上での口約束、みたいなところがありました。ただイギリスの場合、口約束が実行されないことが多くって。あはは。
こちらの労働に関する契約書は相当暑くて、提示されたのを見るのにも時間がかかります。もう、途中で読むのやめて「どうでもいいや〜!」って叫びたくなってしまいます。
映画をNaoさんのブログでも紹介してくださって、ありがとうございました。

さすがに分厚い契約書なので、本当にいろんなことが細々と書いてあります。でも、例えばボーナスの計算方法が詳細に書かれていたりすると、その面ではお互いにスッキリと仕事ができますね。働く側にとっては初めから明確にされた条件でのボーナスを目指してのモチベーションが上がるでしょうし、ひいてはそれは雇用者の利益になりますからね。
ミュージカルの契約書も大変そうですね。ミュージカルだとユニオン加盟などのこともいろいろあるのかと想像します。
帰省、楽しまれて来られてよかったですね!

お祝いのコメント、ありがとうございました。
励みになります^^
契約。
メリハリをつけるものと感じます。
奥ゆかしさを感じる日本の文化は、海外の文化がたくさん入った今、正立する部分が明確になってきていると感じます。
労使の関係以外では、ウチはそうでは無いですが結婚をするのにもそうだということを聞いたことがありますし、職人の様な師弟関係があるものについては、まだそうでは無いのかもしれないなとも思ったり。
奥ゆかしさは、契約など本来必要ない部分では残りつづけて欲しいと思います。
それにしても世紀の大発明、気になりますw