記憶力 |

私は昭和の生まれなので、アナログで育って来た。
修学旅行には36枚撮りフィルムを詰めたカメラで級友や憧れのマドンナのスナップを撮っていた。フィルムなので当然撮れる枚数には限りがある。フィルムの残りの撮影可能枚数と旅行全行程における現在の進捗状況を確認して計画的に撮影することは、非常に重要であった。ほとんどの者はハーフサイズカメラであった。ハーフサイズなら、憧れのマドンナの写真がいっぱい撮れる。
音楽はレコードカセットテープであった。カセットは残念ながら廃棄してしまったが、レコードは全て今でも楽しんでいる。
あくまでも私見であるが、レコードの良さは裏返すという気高い儀式に凝縮されている。A 面からB 面に裏返すことによって、同じレコードでも二つの世界が楽しめる。CD やストリーミングになってからは、この裏返すという儀式がなくなってしまったのでアルバムを通しで聴いていても何だかメリハリがない。あのメリハリの味わいを知らないデジタル世代は不幸である。
昔のレコードを聴いていて、興味深いことがある。「お、この曲が終わったら裏にしなくてはならないな」と言うことがいまだにしっかり記憶に刻まれているのだ。長年アナログで育った者の真骨頂である。
この様に書くと、記憶力が良いことを自慢している様に誤解されそうだが、決してそうではない。1分前に車のキーをどこに置いたかなどと言うことは、まるで覚えていないのだ。
トホホ。