2008年 11月 07日
ニードル シェアリング |
( Rolleicord Vb, Xenar 75mm F3.5, Velvia 100 )
11月に入っても、アラバマはまだ暖かい。今日の最高気温は24度であった。とは言っても流石に11月である。この時期によく目につくようになるのは、インフルエンザの予防注射のお知らせだ。
予防注射と聞くたびに、私は恐ろしい事実をフラッシュバックのようにありありと思い出す。
私はまだ小学生だ。私を含め児童が保健室前の廊下に出席番号順に並んでいる。一人ひとり名前を呼ばれ、出張してきている校医が児童に予防注射をしてゆく。
当時の注射器はガラス製。それを煮沸消毒して何回も使用していた。そして何より問題なのは注射針である。注射針は現在と異なり、使い捨てではなかった。注射針も煮沸消毒して、何回も使っていた。
年老いた校医の横で手伝っているこれまた年老いた看護婦が一本の注射器に5人分くらいの注射液を吸い、使い捨てではない針を取り付けた後、校医に手渡す。今では考えられないことであるが、校医は注射器の中の薬がなくなるまで注射針を取り替えることなく5人くらいの児童に次々と、たった一本の針で予防接種をしてゆくのだ。一人に打っては針をアルコール綿でサッとひと拭きしては次の児童に同じ針で注射をしてゆく。まるで麻薬中毒者が行う薬物の打ち回しのようなものだ。
私の世代の人々はそんな恐るべき医学的石器時代を、肝炎にもエイズにも感染することなしに生き抜いてきたサバイバー達なのである。これはもはや、弾丸が雨あられと降る戦場の中を防弾衣も着用せずにゆっくりと歩いて何らの負傷もせずに生き抜いたくらいの価値があってしかるべきものである、と自負している。今から考えると、本当に恐ろしいことが、当時はそのようなことは当たり前のことであった。
去年アメリカでは、予防注射を打った人達の間にまでもインフルエンザが蔓延するという、アメリカ公衆衛生学史上に名を残す年となった。流行するであろうと事前に予測されたウイルスの型が、実際に流行したものとは違ったのだ。21世紀になった今でも、当たるも八卦当たらぬも八卦、のような話である。
予防注射を打ってもインフルエンザに罹る心配が去ることは無い。しかし、針の使いまわしによる肝炎やエイズの感染を心配することだけは無くなった。よい時代になったものだ。
by goodsurgeon24hrs
| 2008-11-07 18:31
| 独り言
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Comments(6)
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ricora-s at 2008-11-09 23:15
注射針の使いまわしー!!
いつまで続いたのでしょうね。私の小学生時代も流れ作業的な
記憶があるようなないような^^;
インフルエンザの予防接種の時期が来ましたね。
過去には、お風呂に入ってはだめでしたが、今はお風呂がOKなのですよね。
注射をしても、その型以外だと、かかりますよね^^;
教会の窓は、ステンドグラスでしょうか??
教会を見ると、窓ガラスが色づいたものかどうか気になります(笑)
いつまで続いたのでしょうね。私の小学生時代も流れ作業的な
記憶があるようなないような^^;
インフルエンザの予防接種の時期が来ましたね。
過去には、お風呂に入ってはだめでしたが、今はお風呂がOKなのですよね。
注射をしても、その型以外だと、かかりますよね^^;
教会の窓は、ステンドグラスでしょうか??
教会を見ると、窓ガラスが色づいたものかどうか気になります(笑)
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surgeon24hrs
at 2008-11-10 00:12
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ricora-sさん、おはようございます。
ひょっとしてricora-sさんもサバイバー?
「注射の後に風呂にはいるな」は完全にナンセンスですが、昔は普通に言っていましたよね。まさに、医学の石器時代です。
するどいですね、教会の窓はステンドグラスになっています。この写真ではちょっと分からないかもしれませんが....
やっぱり、のんびりだらだらの散歩写真には二眼レフがいいですね。
ひょっとしてricora-sさんもサバイバー?
「注射の後に風呂にはいるな」は完全にナンセンスですが、昔は普通に言っていましたよね。まさに、医学の石器時代です。
するどいですね、教会の窓はステンドグラスになっています。この写真ではちょっと分からないかもしれませんが....
やっぱり、のんびりだらだらの散歩写真には二眼レフがいいですね。
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candypop-m at 2008-11-10 13:06
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k_k1161 at 2008-11-10 21:40
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surgeon24hrs
at 2008-11-11 09:14
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surgeon24hrs
at 2008-11-11 09:16
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k_k1161さん、こんばんは。
忘れていたけど、確かにあの注射器の内筒は紺色でしたね。あの紺色がなんだか余計に痛さを演出していたような気もします。
私の記憶の中でも「校医=老人の近所の開業医」ですね。
忘れていたけど、確かにあの注射器の内筒は紺色でしたね。あの紺色がなんだか余計に痛さを演出していたような気もします。
私の記憶の中でも「校医=老人の近所の開業医」ですね。