2008年 04月 15日
随意と不随意 |
年間250から300件ほどの手術を担当しているが、1年に一回くらいは不幸にして手術が予想外の長時間になることがある。それに関して「その間の食事はどうするのか」、「トイレはどうしているのか」という質問を受けることが多い。答えはどちらも否である。
食事を摂らないのは言うまでもなく非常に簡単。別に1、2食抜いたところで死にはしない。糖尿病の患者でもない限り、普通の栄養状態であれば4、5日間何も食べなくても低血糖になることはない。人間も所詮動物、飢餓状態に対する防御は生まれながらにバッチリ備わっているのだ。
さて、問題のトイレであるが、これも答えは簡単である。トイレには行かない。行きたいのを我慢しているのではなく、行く必要がないのだ。外科医はボクサーではないので、水分制限などはしない。しかしたとえ手術が12時間以上に及んでも、排泄行為の必要がない。
そこで思い出すのが、国際線の飛行機である。1年に1度、日本に1週間ほど帰省する。飛行時間は気流にもよるが約14時間である。私はいつも機上ではコーヒーをはじめ、ジュース、コーラ、ビール、ワインなどと機内サービスのありとあらゆる飲み物を、勧められるがままにありがたくいただくことにしている。貧乏性なのでは断じてない。遠慮深い私は、勧められたものを断ることができないのだ。機上では、私の水分摂取量が家族の中で一番多いと思われる。しかしアメリカで離陸して成田に降りるまで、私は1度もトイレに立たない。根が生えたかのように、一動だにしないのだ。ここでも手術のときと同様、我慢しているのではなく行く必要全くがないのだ。
こうして考えてみると、不随意の機能と思われている尿の産生も実は無意識のうちに自分でコントロールしているのではないか、と思えさえしてくる。不随意機能に働きかける随意の影響、と言い換えても良い。
私がこういうことを言うと、医師としての知識や見識を問われそうである。しかし人が彼はキチガイではないのかと思うようなことでも10年間ひたすら主張し続けると、いつの間にかその世界の権威となれる。少なくとも今のところは、私の考察を撤回するつもりはない。
by goodsurgeon24hrs
| 2008-04-15 06:05
| 仕事
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